ペットOKの賃貸部屋探し


私はそもそも猫など飼うつもりはありませんでしたので、ペット禁のワンルームに随分長いこと住んでいました。猫に取り付かれてからも、自分は猫など飼える環境にないという事は当然認識していましたが、あろうことかその場所で3匹の猫を抱えることになりました。 当初はちょっとした鳴き声さえ偉く気にしていましたが、隣人は「ウチのほうこそオーディオの音が煩くないですか?」なんて言ってくれるし、日々鈍感になり、 「部屋を何とかしなければ・・」と思いつつも、生来尻に火がつかないと何もしない私はそのまま過ごし続け、 2年以上経ってついにネコバレとなりました。 同じくペットと住める部屋へ移りたいと思ってる方に、少しでも私の経験が参考になればと思い、書いてみることにしました。

私の場合は、1匹のオスを去勢しないでずっと置いていたため、その大きなわめき声が誰かの迷惑に到達してしまったみたいなんですが、普通に鳴かない猫であればバレずに済むことも多いようです。 と言っても、ペット禁の部屋で内緒で飼っている方にとって、Xデーの時のための基礎的な情報は無駄にはならないと思いますよ。
ここではあくまで賃貸が対象ですが、ある不動産屋の話しでは、全体の一割に満たないというのが現状だそうです。 対してペット希望で来店する客というのは全体の4割を超える勢いとのこと。。 実に少ないですね。どの不動産屋でも通常の物件ファイルとは別に「ペット・ピアノ」という希少物件のファイルが別に1册だけ置いてあったりします。
実際、物件が少なくて苦労はしますが、怯む必要はないと思います。 不動産屋によっては、こちらを犯罪者扱いしたり、エラく強気の態度に出たりすることもありますが、 上昇するこの市場の要求に答えていかなければならない事は、当人達が一番よく知ってるのですから、 こちらも堂々と探せば良いんだと思います。猫を飼ってる方なら心配ないと思いますが、「こっちは客だ!」的な横柄な態度はどんな業者にもいい印象は与えないので、そういう意味での堂々ではありません(笑)。 特に自分のペットが1匹ならば、かなり早期にいい部屋に出会えるかもしれません。

賃貸系のサイトなどで多く取り上げられていますので詳細は書きませんが、基本的な要素と所感です。

・物件のタイプ
ペット物件には大きく2つの傾向があるようです。
1つは昨今のペットブームを反映したペット対応マンション(埼玉のアドホックという会社が精力的に展開しています)や、普通の高級マンションでペットOKのもの。。これらは最初からペット飼育を前提としたものです。家主も基本的にはペットに理解がある様です。 お金があれば迷うことなくこちらであると思いますが、ペット対応タイプは現状やはり稀少です。最大のメリットは周りも全てペットオーナーという安心感だと思っています。 家賃を18万くらいなら平気で出せる人は、高級タイプが割りと探し易いので、ササッと決めてしまうのが吉と思います。

2つ目は、立地や築年数から賃下げを避けられないため、やむを得ずペットOKの不可価値を付けて高家賃を保とうとしているアパートなど。元々はペット禁の所が大半ですが、ペット嫌いな家主なら解禁などしませんので、大抵は「ペットはいいんだけど、部屋の損壊や近所迷惑が嫌だからしぶしぶ。。」という人が多いようです。敷金が割り増しされるのがこのパターンです。正直、ペットが無ければこんな家賃で住みたいとは決して思わないという印象を受けるものばかりです。70年代前半の築なんてのはザラで、中には60年代というのもあります。頑張る不動産屋が開拓していくのはこっちのタイプですね。 懸念になるのは、建物のボロさよりも周りは本当にペットな人達なんだろうか?という人的環境です。
実際は、私を含むかなりのペットオーナーがこの手に落ち着いているようです。

補足しますと、ペットOKというのは大抵が2DK以上のファミリー物件になります。 独身用の部屋というのは入れ替わりが激しいので極力修繕のリスクを避けようと、ペット禁にしてるケースが多いようです。対して猫のオーナーは独身が多いという現状もありますね。 つまり、お金が無くて、愛猫と一緒なら現状よりボロい部屋でも構わないという覚悟が出来ていて、たとえ結婚する気がなかったとしても、 間取りが広がるからには最低ラインもワンルーム並とは行かなくなるのです。 ちなみに前者ペット対応タイプで、ワンルームのものとかも最近は出て来ています。造るほうもやはりよく調査していますね。

・飼育可能なペットの種類
ペット可能な部屋といっても、何でも飼える訳ではありません。室内犬だけOKとか、猫だけOKとかいう物件は結構多いのです。 原則、猫は一番の嫌われもので、「爪で建て具や柱に傷が付く」というのを家主は最も嫌がるらしいです。 対して猫のみOKというのは、家主が猫好きな場合もありますが、犬の鳴き声によるトラブルで痛い目にあったというのが多いようです。 町田のある物件では、以前は両方OKにしていたが、ある住人がゴールデンレトリバーを2匹室内に置いていた事が、アパートを超えて近所中の大トラブルとなってしまい、犬はNGにしたそうです。 実体験が根拠になってる事が多いので、一概にそこの家主が猫嫌いとか、犬嫌いという風には言えないと思います。 が、私見としては、犬はこうだ・・猫はこうだ・・というのではなく、動物と暮らすということ自体に基本理解が欲しい訳ですから、両方OKというのが基本条件と考えます。

・飼育可能なペットの数
これは結構重要です。というのは、ほとんどの部屋で飼っていいのは1匹というのが前提なのです。 私が3ヵ月余りに渡って歩くハメになったのはここが原因であり、1匹ならそれこそ1月もかけずに探せたと思います。 業者間では毎週斡旋物件というのを回しているので、余程ペットが嫌な店でない限り、なにかしら物件を紹介してくれます。 でも、ここでアウトとなる訳です。・・・本当に少ないですよ、複数飼育をOKしてくれる部屋は。。
飼い主側としては不服もありますが、「複数=煩い」というのが根拠のようですから、逆に1匹だけ可というのは「しぶしぶOKしてる物件だな」という体質判断になって良いのではないかとも思います。 上述のペット対応マンションでも「2匹までしかダメ」というのがありますし、ペット物件探し支援サイトという所でも、2匹までしか受け付けてませんでした。ペット推進派からも、複数飼育というのは犯罪者なんですね。
ある不動産屋などは、「猫だからわかりゃしないから、黙ってれば?」なんて耳打ちしてくれましたけど、生真面目な私は家主に対してもその辺の理解を求めていたので、嘘は採用しませんでした。

結局、私が歩いた中で「3匹でもOK」というのは家主の趣向以外にないような気がしています。この点は複数飼いのオーナーさんには当分険しい 現状だと思いますが、家主というのは全てが頑固でケチな訳ではありません。自分が資産を手に入れて、賃貸アパートでも始めてみる事を考えて ください。理解的な家主だってたくさん居ます。必ず居ます。つまりここから先は、”諦めないこと”だけが合法的なペット生活に繋げてくれる のだと思います。

・不動産屋のタイプ
私が実際歩いた中でわかった事は物件以上に不動産屋の傾向というのが結構重要であるということでした。これはあくまで私見ですが・・ 不動産屋には、個人経営の「町の不動産屋」と、大小はありますがエイブルの様な「大手不動産企業」とに大きく分けられると思います。 で、普通に部屋を探すのならば私は、「企業」の店員よりも、「町不」のオヤジのほうが、後々の付き合いなんかを考えても安心感、親近感を持ちます。実際、親身になって話しを聞いてくれたりもします。 店自体が小さくても、前述の斡旋用の物件がほとんどの店に回ってるので、紹介物件数で大きくデメリットがあるとも思いません。
ただ、ペット物件となるとちょっと変わってきます。 「町不」の場合は、主として地元の大家との信頼関係で成り立っています。つまりトラブルを大きく嫌い、どうしても家主よりの立場に傾くため、リスクの大きいペット物件自体を敬遠する傾向にあるようです。実際、この手の店では門前払いが多かったというのが実感です。 対して「企業系」の場合は、市場経済に敏感なため、家主も大事ですが、借り手の動向を物件に反映させる、つまり家主に理解させるという努力に余念がありません。従ってペットに関する偏見も少なく、心良く紹介してくれるケースがほとんどです。 つまり、保有物件の数ではなく、店の体質として「企業系」のほうがペット物件を探しやすいということは言えると思います。 これはあくまで入り口の話しで、不動産屋としての善し悪しではありません。

不動産屋について補足ですが、とても気に入った物件が「複数飼いNG」、「犬のみ可」などの場合、ハンデを切り出す交渉のテクニックとして、いきなり「猫3匹なんですが・・」などと言わず、モノを見て、気に入った事を伝えてから切り出す。。ほうが、不動産屋としても家主を説得しやすいようです。 前提として、家主にとっては部屋が空いているのは、会社で社員を遊ばせているのと同じ・・ほとんどの建物では未だに銀行への返済途中ですから・・という事情もあって、できるだけ早期に入居者が欲しい。で、自分の大事で可愛い会社を心底気に入ってくれた人なら尚良い訳です。 そこへ。「私以上に誠実な人間が居るというのなら、ここへ連れてきてくれ!」と言わんばかりの貴方の人格を持っていけば、多少の要求くらいは呑んでくれる。。可能性も全くないとは言えないので、トライしてみる価値が全くないとは言えない。。(笑)
また、ペット物件を探しに行くと、大抵「既に飼ってるのか?バレてるのか?」と聞かれます。 ここで実際がどういう状況であれ、「バレちゃってます・・」などと言ってはいけません。その事自体、貴方が適切に飼えてない(猫の場合、適切に飼えてればバレないのだから)という事をゲロしてるようなものです。

・自分の探し方。
ここからは全くの私的アプローチで、もっとよい方法はいくらでもあると思います。(特に時間に余裕があれば) 私は希望沿線とか駅というのは持ちませんでした。当初は自分の家の近くの南武線、小田急線を私は足で歩いて探していましたが、 駅を絞ると絶対数の少ないペット物件を見つけるのは難しくなります。よって沿線と駅は、最低限通勤が不可能ではない所を条件として、広く取りました。実際、安心して住めるのなら何処でもよかったんです。
不動産屋へ赴いてそこで一件見に行くという過程は結構な時間を要するものです。 かといって、間取り図だけ何枚見ても参考くらいにしかなりません。そこで高率よくネットを使う方法へと切り替えました。 これなら私の場合、南武、小田急、京王、田園都市、東横、横浜と一度にかなりの沿線を探せますが、それでも手間なので沿線でなく、 市や区をキーにして探していました。 面白いことに、探しているうちに、ペット物件の多い傾向にある駅というのが挙がってきます。これは地元の不動産屋 などの体質によるかもしれませんが、昔からあるような町は、物件自体も旧く、また多いため、出て来易いということは言えるようです。
ネットはとてもメリットがあるのですが、よく言われるようにそこにある情報が全てではありません。 PCの画面はあくまでリストアップのための手段であって、そこで選んだり検討していても”現実の世界”は推移しています。 メールで問い合わせなど呑気な事をしていたら、状況は変わってしまいます。
目を付けた物件があったら、先ず不動産屋へ電話し、物件のFAXを頼みます。大抵の店はここで条件の詳細を聞きたがりますので、それに合った物件が他にもあれば一緒に全部流してくれます。これにはネットに出ていないものあります。
私の場合はFAXに書かれている物件の住所を知ることが目的で、自分で勝手に現地へ行き、主に周りの環境と部屋の陽当たり、駅への時間等を見ます。 この時点で却下な物件は中を見る意味もなく、不動産屋に付き添ってもらう必要もない訳です。 不動産屋に案内してもらうと、先ず店頭で来店書類を書かされたり、何だかんだ言って申し込みをせまったり、時間を要して面倒な点もあります。 時間が余れば、次いでに現地の不動産屋に当たります。
この繰り返しですが、ほとんどの物件は何かしら環境面に問題がありました。 そんな中で70点くらいのものについてだけ不動産屋へ連絡し、未だ現地も知らないかの様に装い、案内して貰います。 とにかくそうして広い範囲の色んな物件をなるべく見れるように心掛けていました。

・条件と実情
ペットオーナーにとって不幸なのは、物件が稀少な中で、条件的には通常の部屋よりも多くを求めなければならない。 という矛盾ではないでしょうか。安全性、健康面、防音性、人的環境など、人だけが住む場合に比べて気にしなければならない事が多くなってしまいます。個々に依る所なので簡単にしておきますが、当初の私の条件は、
・周りの環境が危険でないこと
・1階の部屋であること
・住民にペットオーナーがいること
・家主がペットに理解あること
・南向きであること
・鉄筋であること
・2DK以上であること
・駅まで歩けること(25分まで可)
・徒歩圏内に獣医があること
こんな条件のモノが実際に存在したら苦労はしませんね(笑)。でも近いものはかなり存在し、多くは予算か、複数飼いで撃沈されました。
前半の人的環境についてだけ補足しますと、ペットトラブルというのは、「迷惑」と感じる住民がいて初めて発生するものですから、同じ事でもそれがトラブルになるかならないかは、周りの体質(普通の人、ペットの人)にも関わってくると思います。 つまりペットOKと物件が謳っていても住人がそれに沿っていないためにトラブルになっては意味がありません。 それがたとえ合法的であってもです。 相手がペット好きなら何をしてもいいという事では勿論ないですが、「何が迷惑なのか・・」は想像もしない所にあったりするものですし、自分の身に降り掛かる事として気にしてみる意味はあると思います。 ペット対応マンションの利点はこの人的環境にあると思います。「お昼ね棚」とか「ニャンコドア」などの装備よりも、周りは皆動物を飼っているという、大きな安心感ですね。
と、ここまで言ってなんですが、抽象的な項目なので、あまり気にすると決まらなくなります(笑)。
それに多くの不動産屋が言っていましたが、前述のゴールデン2匹とか凄い飼い方をしてなければ、ペット物件でペットのトラブルというのはほとんど発生してないそうです。
更に、貧乏物件についても、実際はほとんどの部屋で犬だの猫だのが飼われているようでした。 ある不動産屋曰く、ペットオーナーは貧乏人が多いそうです。(笑)
更に更に、貧乏物件にもそれなりに良い所はあるのです。
調布のある物件は、普通の住宅街の中でちょっと浮くような未舗装の大きな敷地内に、築30年にはなろうかというアパートが2棟向かいあっていました。入り口には夕日にあたっている2匹の猫、その奥にある家主の邸宅付近からは、1匹の茶トラがこちらに向かってきます。人懐こいその猫に着いて歩いて行くと、子猫を含む10匹近くの猫達がうろうろと。。穏やかな時間でした。
諸条件より、そこには決めなかったのですが、この世の楽園ではないか(笑)と思ったこの区画だけは、ペット=トラブルメーカーという定説とは別次元にある、時間が止まったような、おおらかさ、優しさ。。私の求めていた空間は正にそれであり、鉄骨管理社会の「安心」を超えた「憧れ」を感じました。

ここまで散々偉そうなことを書いておきながら、 最終的に決まった物件は、「与えられた時間枠では最後に見つかったもの」というに過ぎない、妥協の産物です。 スケジュール的にもギリギリで、契約完了から、引っ越し完了まで、2週間程しかありませんでした。 もしも今住んでるこの物件が、「南向き」であり「鉄筋」ならば、ここでの書きっぷりも全然自信に満ちた口調に なっていたでしょう。 「南向き」を妥協したことはとっても不服なのですが、部屋の前は畑なので昼までは部屋に光りが入ってきます。 何処かの首相の好きな言葉のように「統合的、包括的に判断し・・」そうなってしまいました。 なんとか外へ出さずに、ベランダで直射日光に当てる手段はないか・・今はその事が課題となっています。

これから探そうとされる方にとって、今後のペット物件の動向が少しでも良い状況になっていく事を願って止みません。 (2003.12.23)
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